プロンプトは1回、追加の指示は4回。あとは64時間、Claudeが自分で考えて動いた。Anthropicの内部研究モデルが実験に回した211個の設計のうち、17個がサソリの毒に結合した。ただし、これは解毒薬ではない。
AnthropicはClaudeに何を設計させたのか
サソリの毒は、神経細胞のナトリウムチャネルに噛みつく小さなタンパク質の集まりだ。毒素が結合する部位を先に塞げば、神経信号は乱されない。Anthropicが狙ったのは、そこに貼り付くミニバインダーだ。
対象は4地域の5種類。メキシコのCn2、ブラジルのTs1、北アフリカのAaH IとAaH II、中東のLqhIIIである。プロジェクトは投資調査会社Citrini Researchとの共同だ。
64時間の自律キャンペーンで起きたこと
人間が渡したのは最初の1プロンプトと4回の追加指示だけ。あとはモデルが判断した。12種のツールで31万8484個を設計し、55万3052組の設計と毒のペアを絞り込み、約1万GPU時間を消費した。
効いたのは選別だ。モデルが180個を選び、人間が31個を足して211個になった。湿実験の枠は限られる。何を実験台に乗せるかを決める行為は地味だが重い。
17個の結合タンパク質はどう検証されたか
試験は2つの受託機関が別々に行った。Adaptyv Bioは無細胞系、Twist Bioscienceはヒト腎細胞で発現させ、結合はSPR法で測った。両施設で結合し、全反復で信号が出て、解離定数が1µM以下、対照のCLEC12Aに結合しないものだけを採用した。
毒素 | 地域 | 結合した設計 |
|---|---|---|
Cn2 | メキシコ | 7 |
AaH II | 北アフリカ | 4 |
AaH I | 北アフリカ | 4 |
LqhIII | 中東 | 2 |
Ts1 | ブラジル | 0 |
最良のCn2-B1とCn2-B2は、Cn2に対して1桁ナノモルの結合親和性に届いた。単一の毒を狙った60個のうち11個が結合し、命中率は18%。複数の毒を同時に狙った設計は1つも通らなかった。
サソリ毒が既存治療で対処しきれない理由
世界で年間120万人以上が刺され、3250人以上が死亡する。多くは医療アクセスの限られた地域の子どもだ。従来の抗毒素はウマを免疫して作り、数カ月かかるうえ毒の範囲も狭く、価格も高い。
この実験が示していないこと
細胞での中和試験も、動物実験もない。Anthropic自身が抗毒素を作ったとは主張していない。結合は8つほどある関門の1つ目に過ぎない。細胞で毒を止められるか、用量、安全性、量産、途上国が払える価格は別の問題だ。CNIOのSusana Vázquez Torres氏は有望な第一歩、DTUのTimothy P. Jenkins氏は薬までの距離を指摘した。
8月の結果は1プロンプト1回の実行だった。今回は2日半にわたり、モデルが次の手を決め続けた。生成は難しくない。難しかったのは一連の作業を回し切ることだ。
設計は公開されている。外部の研究室が中和試験を担える。Cn2の結合タンパク質が細胞で毒を止めた、という報告が出れば話が変わる。






