MiniMaxは10月23日、MoE構成の大規模モデル「MiniMax-M3.1-Flash」の重みをHugging FaceとModelScopeで公開した。モデル本体の発表は10月19日。4日遅れて、自前の環境で動かせる状態になった。
MiniMax M3.1 Flashの重みが公開された日
MiniMax-M3.1-Flashは、同社がエージェント用途を想定して作ったモデルだ。10月19日の発表時点では「重みは後日公開する」とされていた。実際に公開されたのは10月23日の未明で、同社のXアカウントが協定世界時1時6分に発表している。
Hugging Faceのモデルカードによれば、テキスト、画像、動画を入力に取り、テキストを返す。ネイティブなマルチモーダルモデルとして作られており、後から視覚機能を継ぎ足した構成ではない。
配布先はHugging FaceとModelScopeの2カ所。MiniMax API、M Plan、MiniMax Codeでも同じモデルが使える。
428Bを23Bだけ動かすMiniMax M3.1 Flashの設計
総パラメーター数は約4280億。1トークンを生成するときに実際に動くのは230億で、全体の5%ほどにあたる。Mixture-of-Experts(MoE)は、入力に応じて一部の専門家だけを呼び出す仕組みで、モデルの大きさを保ちながら計算量を抑えられる。
コンテキストウィンドウは100万トークン。加えて、すべての層にMiniMax Sparse Attention(MSA)を採用し、長い文脈を扱うときの計算を間引く。DSparkと呼ぶ投機的デコーディング用のドラフトヘッドも積み、出力の生成を速める。学習段階から量子化を前提にした量子化認識トレーニング(QAT)を回しているため、圧縮後の精度劣化を抑えやすい。
同社の説明では、オンライン推論は約3倍速く、利用コストは70%下がる。日常的な出力は毎秒200トークン以上、P50でも毎秒170トークンを安定して出すという。
「Space Bunny」として200兆トークンを処理していた
公開の前に、このモデルは別の名前で動いていた。OpenRouter上に「Space Bunny」という匿名のモデルとして現れ、正体を伏せたまま使われていた。MiniMaxによれば、その間に処理した量は200兆トークンを超える。M3.1 Flashの初期版だったと、公開後に明かしている。
匿名で出して実運用の負荷をかけ、フィードバックを得てから名前を出す。モデル開発の進め方として珍しくはないが、200兆トークンという規模は別格だ。不特定多数のプロンプトで鍛えられた状態が、そのまま公開版の出発点になっている。
MiniMax M3.1 Flashのエージェント向けベンチマーク
同社の発表によると、コーディングエージェントの実装力を測るDeepSWE v1.1で73.7%。コンピューター操作を評価するOSWorld V2は61.7、エージェントの総合課題であるAgents' Last Exam(ALE)は29.6を記録した。サイバー領域のCyberGymは82.2、銀行業務のツール操作を模したBankerToolBenchは76.2だ。
OSWorld V2とALEについては、中国のモデルの中で首位だと同社は主張する。AutomationBench-AAでも最上位の集団に入るとしている。ただし、いずれも自社で選んだ条件での測定であり、外部機関による検証は公表されていない。
数字を並べるより、用途で見たほうが判断しやすい。コンピューターを操作して手順を踏む課題と、長い手順を自分で分解する課題の両方で一定の水準にある。つまり、単発の質問応答よりも、ブラウザや業務ツールを渡して仕事を任せる使い方に向く。
では、その能力はどんな場面で効くのか。
マルチモーダルと100万トークンが効く場面
MiniMax M3.1 Flashは映像も入力に取る。画面録画を渡して操作手順を説明させる、長い会議の記録から要点を拾う、といった使い方が現実味を帯びる。スクリーンショットを撮って渡す手間が減り、視覚情報をそのまま文脈に置ける。
100万トークンという文脈量も、エージェント用途では効く。ツールの実行結果、エラーログ、参照した資料を会話の中に積み上げても、途中で古い情報を捨てずに済む。長い作業を任せたときに、序盤の指示を忘れる現象を抑えやすい。
ただし、文脈が長くなるほど入力トークンは増える。単価が安いとはいえ、無制限に詰め込めば請求額は膨らむ。何を残し、何を捨てるかの設計は利用者側に残る。
MiniMax APIの料金は入力0.15ドル、出力0.60ドル
MiniMax APIの価格は、入力が100万トークンあたり0.15ドル、出力が0.60ドル、キャッシュ済み入力が0.015ドル。段階を設けず、すべての利用量に同じ単価を適用するフラットな料金体系だ。
エージェントを長時間走らせると、入力トークンが膨らみやすい。ツールの出力や会話履歴を毎回読み直すためだ。入力単価を低く抑え、キャッシュをさらに安く設定しているのは、その使い方に合わせた値付けだといえる。
MiniMax Community Licenseと252GBという現実
ライセンスはMiniMax Community Licenseで、Hugging Face上は「other」と表示される。FourWeekMBAなどの報道では、年商2000万ドルを超える製品で使う場合に別途の許諾が必要とされ、ダウンロードの総量は約252GBに達すると伝えられている。いずれも第三者の解釈であり、契約前に原文を確認したい。
252GBというサイズは、個人のノートPCに置ける量ではない。データセンター向けのGPUを複数枚そろえ、量子化して運用する前提になる。重みが公開されたことと、手元で動かせることは別の話だ。
MiniMax M3.1 Flashを手元で動かす前に
MiniMax M3.1 Flashは、巨大なモデルを小さな計算量で回す方向を突き詰めた一本だ。APIで試すだけなら今日から可能で、料金もエージェント用途としては安い部類に入る。
自前で運用したい場合は、ライセンスの収益条件、必要なGPUメモリ、量子化したときの精度低下を先に確認する。252GBを扱える環境がないなら、APIとMiniMax Codeで様子を見るほうが現実的だ。重みの公開は選択肢を増やしたが、その選択肢を使うには相応の設備が要る。







