NVIDIAが120Bのオープンなマルチモーダルモデル「Nemotron 3.5 Super VL」を公開した。画像・文書・映像の理解とツール操作を1つのモデルにまとめ、企業のエージェント運用を狙う。
Nemotron 3.5 Super VLとは何か
NVIDIAは2026年10月15日、オープンウェイトのマルチモーダルモデル「Nemotron 3.5 Super VL」を公開した。総パラメータ120B、推論時に働くのは12BというMoE構成で、文脈長は100万トークン。テキスト、画像、文書、映像を同じモデルで扱える。
マルチモーダルとは、複数の種類の情報をまとめて処理できることを指す。従来は文書を読むモデル、画像を見るモデル、ツールを操作するモデルを組み合わせる必要があった。NVIDIAはこの分業を1つのチェックポイントに統合した。
同社は、命令の追従、ツールの使用、複数手順の業務フロー、視覚的な理解といったエージェント向けタスクで「高い精度」を達成したと説明する。ただしこれはNVIDIAの主張であり、独立した検証とは分けて受け取るべきだ。同社によれば、最大規模の推論モデルと比べても、約5分の1のパラメータ数で同等の精度に届くという。
エージェント運用を狙う設計
Nemotron 3.5 Super VLの売りは、企業がエージェントを止めずに動かせる点にある。エージェントとは、指示を受けて自律的に作業を進める使い方を指す。
同社は、Artificial Analysis Intelligence Indexにおいて、Ling 3.0 FlashやDeepSeekなどの同種モデルと比べて最大約5倍のスループット(単位時間あたりの処理量)を記録したとしている。同じGPUでより多くの処理をこなせれば、運用コストは下がる。大量のリクエストをさばく企業にとって、速度は精度と同じくらい重要になる。
導入のしやすさも意識されている。NVFP4という量子化形式の重みを使えば、単体のDGX Sparkで動かせる。量子化とは、数値の精度を落としてメモリ使用量を抑える手法だ。データセンターから手元のマシンまで、同じモデルを規模に応じて配置できる。
NVIDIAはこのモデルを、Nemotron Coalitionと呼ぶ協業の枠組みの中で開発した。外部パートナーと共同で評価を重ねる体制をとっている。
小型モデル「Bolt」の位置づけ
Super VLと同時に、2つの小型モデルが「Bolt」として発表された。これは端末側で動かすことを想定した軽量版である。
大きなモデルをすべての場面で使うのは非効率だ。応答速度が求められる場面や、通信を最小限にしたい場面では、小型モデルを併用するほうが合理的になる。NVIDIAはデータセンター向けの大型モデルと、端末向けの小型モデルを組み合わせ、用途に応じて使い分ける構成を描いている。
企業にとっての意味
企業がエージェントを導入する際、以前は複数のモデルを配線でつなぐ必要があった。文書を読ませ、画像を判定させ、外部ツールを呼び出す処理を個別に組み立てるのは手間がかかる。
Nemotron 3.5 Super VLは、こうした工程を1つのモデルにまとめる方向を示す。映像を含む入力を扱えるため、監視映像の確認や現場記録の整理といった用途も視野に入る。ツール呼び出しに対応する点は、社内システムを操作するエージェントを作る際に効いてくる。
ただし、公開されたばかりのモデルを本番業務に組み込むには、自社データでの検証が欠かせない。ベンチマーク上の数字が、実際の業務で同じように出るとは限らない。まずは限定的なタスクで試し、応答の安定性とコストを測るのが現実的だ。
モデルの重みとライセンス条件は、NVIDIAの配布ページで確認できる。エージェントの構築を検討しているチームにとって、選択肢が一つ増えたことになる。






